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行かねばならない緑の革命の農業技術は長期的存続性に問題があると考える23)。しかし2020年までの途上国の人口爆発のピークの期間に穀物供給を増大させる必要を考えれば、この技術に一定期間頼らざるを得ず、新しいより適切な技術が定着するまでは環境汚染を最小化するような方法を研究開発して対応すべきであろう。現在の農業技術を前提として穀物別では、小麦・大麦・ソルガム・雑穀は増産の困難な地域の割合が、コメやとうもろこしに比べ大きく、世界の急増する需要に対応して単収を引き上げるのが困難であるとされている。24)しかし現存する世界各国・地域間の大きな穀物単収差は既存技術の採用余地を示し、特に途上諸国では適切な化学肥料の増投により単収増と環境破壊・土壌劣化の軽減の両方が可能とする意見もある。25)単収格差はしかしたとえば小麦の単収の西ヨーロッパと北アメリカの大きな格差から明らかなように、潜在的技術採用の格差を示すのではなくて自然的条件の制約を示す場合が多い。上で述べたように穀物単収の増加率は80年代にかなり低下し、コメの新高収量品種の単収はアジアで低下している。アジアに生産と消費の90%が集中するコメの場合、上述のように収穫面積も減少しており、2020年にかけての人口爆発のピークに対応するためには年率3%の単収増が必要である。26)今日までの育種の努力は色々な作物の潜在単収を年1〜2%程度引き上げてきたが、27)長期にわたるコメの単収の3%の増加は非常に困難である。
農業におけるハイテクやハイブリッド品種の新技術の反収増加に対する効果はどのように評価されるのであろうか。30年代のアメリカでのとうもろこしのハイブリッドの出現以来、雑種強勢は反収増加の有力な手段でブレーク・スルー技術と考えられてきた場合もあったが、そのような見方は楽観的に過ぎる。コメのハイブリッド品種は大規模には中国のみ(92年に収穫面積の55%)で栽培されているが、これはこの種子生産の高い費用を中国の低労賃や補助金が支えているからであり、単収は20%ほどしか増加していないといわれている。小麦のハイブリッド種子は過去25年の努力にもかかわらず、種子生産の高費用のため成功していない。28)遺伝子転換や遺伝子地図作製の方法によるハイテクは、過去20年間作物単収を大幅にあげると期待されたが、現在現実的成果はほとんど得られていない。ハイテク新技術・種子が世界の発展途上諸国の農家に広く普及するまでには何十年もかかると認識している研究者が多い。ハイテ

 

 

 

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